2023年5月18日木曜日

オオルリシジミ物語~絶滅の危惧

ゴールデンウィークを過ぎたころに南阿蘇の草原でオオルリシジミが舞う可憐な姿が見られました。しかし残念ながら今では数が激減して、毎年観察に出かけても見られない年も多くなりました。
給水に集まったオオルリシジミ(2011年5月14日撮影)


オオルリシジミの雄と雌(2020年5月19日撮影)


オオルリシジミはシジミチョウ科の小型の蝶で、コバルトブルーの美しい蝶です。現在は熊本県の阿蘇と長野県、大分県の一部にしか生息していません。国の絶滅危惧種(レッドリスト)に登録され、採取すると懲役または罰金が科せられます。長野県のオオルリシジミは自然では絶滅したと言われ、現在は有志が許可を得て飼育し国営公園に毎年放蝶しています。
草原を舞うオオルリシジミは短い期間にパートナーを見つけ、食草のクララに卵を産み付けます。幼虫はクララのつぼみしか食べません。やがて大きくなった幼虫は地面に降りてさなぎとなり翌年の春に羽化して、また草原を飛び回ります。

食草のクララ

食草のクララは阿蘇の野焼きと深い関係があります。野焼きは主に草原の牧草地で行われます。野焼きによって草原は林や森にならず草原が保たれます。その草原に食草のクララが自生しています。オオルリシジミのさなぎは野焼きで死にません。アリと共生していることが知られておりオオルリシジミの幼虫が出す甘い蜜をアリが好みアリはオオルリシジミの幼虫を外敵から守ると言われています。さなぎもアリの巣の近くで見つかるそうです。

私がオオルリシジミに初めて出会ったのは今から約50年前、中学3年生の時です。当時昆虫同好会に所属して、主に阿蘇の蝶を採集して記録したり卵から育てたりしていました。オオルリシジミは当時すでに大変珍しく、羽化する時期は何年も阿蘇に通いました。そしてついに出会い1頭採集することができました。それは南阿蘇ではなく今まで採集記録がない阿蘇市側の草原でした。その日は小雨も降る悪天で、高森駅から宮地駅まで歩いてその途中で出会うことができました。今でも鮮明に覚えています。オオルリシジミはかつて地獄温泉の近くに多産していました。当時はまだ罰則などはなく採集ができました。標本は1頭3000円ほどで売買され都心から飛行機で採集に来て3桁の蝶を持ち帰っていたという噂がありました。そして地獄温泉のオオルリシジミは絶滅しました。
もちろん当時は採集しても罰則など無く、採集者のマナーに委ねられていたわけです。今は法律で縛らないとまたこのような事態になりかねません。しかし、最近個体が著しく減っているのではないか。監視の目を盗んで採集者が採っているのか、温暖化の影響がここにもあるのか。草原にはクララが今も多く自生しています。漢方の薬にもなるクララは癖があって牛が食べないので草原でよく見かけます。食草がないためではないようですが見かけなくなった理由は私はわかりません。
以前、公的機関の方に、熊本のオオルリシジミを飼育して保護すべきではないかと尋ねたことがありましたが、長野県とは状況が違って熊本は牧場で立ち入りが制限されており頭数もいるので飼育は許可されないだろうと言う返事でした。しかし、環境などの変化でいつ激減したり絶滅したりするかもしれません。私は認められた組織で飼育して保護すべきだと考えます。そして、長野県の国営アルプスあづみの公園のように成蝶を放して入園者が観察したり撮影したりして観光にも一役買ってもらいたいと思います。

オオルリシジミは、南阿蘇村の村民の蝶であり、熊本県の天然記念物にも指定されています。もっと多く県内外の人たちに知ってもらい見てもらいたい。そのためには保護して育てないといなくなってしまう。子どもの時からオオルリシジミが大好きな者の一人として思い願います。


2023年5月17日、南阿蘇の草原で飛び回るオオルリシジミを2頭見かけました。1頭はクララに止まったところを撮影しましたが、止まってもまたすぐに飛び回るのでこんな写真になってしまいました。羽の鱗粉も薄れかけているので羽化して日数がたっているのでしょうか。雌を探して飛び回っていたのでしょうか。

阿蘇山火口立ち入り規制 レベル2→1引き下げ

   ●最新の情報 ・2024年4月26日に阿蘇山の噴火警戒レベルが 2から1に引き下げられました。 火山噴火情報は下記で紹介されていますのでご参照ください。 阿蘇火山火口規制情報 阿蘇山の活動状況(気象庁) 火口からの距離(阿蘇市) 南阿蘇のOGA亭は、阿蘇山火口から直線で約1...